革職人の誕生秘話

 

 

私の実家は、バイク屋を営んでおり、その為いつも幼少期からいろいろな工業製品に囲まれて育ちました。

いつも周りには、自転車の発電機やホイール、タイや、ハンドル、エンジンなど様々な機械がありました。そして、バイクに乗るお客さんはいつも革で出来たジャケットを着ていました。

このような環境だったので、私も革製品とモーターサイクルに自然と興味を持って行きました。

 

1990年代当時、バイク、ファッションなどのサブカルチャー情報は雑誌のみ。私は、MA-1(廃版)、ストリートバイカー、Boon、などの雑誌がが主な情報源です。それでも毎月、雑誌の発売日を心待ちにし、流行りのバイク、ファッションを見て心躍らせていたのを今でも覚えています。

そんな中、MA-1という雑誌の特集の中で、激しい衝撃を受けました。

特集のタイトルは、「ロサンジェルスのバイカー」。紙面では、空の高いLAのアメリカの若者がネルシャツにジーパンというとてもラフな格好で、ハーレーダビッドソンにまたがっている写真でした。何気ない日常の風景ですが、ファッションとしてのバイクにまたがる姿がとても新鮮に思えました。

私の周りでは、当時バイクというと「単に移動手段、またはツーリングの足」の様な感覚でとらえておりました。それが、ファッションとしてバイクに乗っている事に激しく衝撃を受け、夜になっても胸のバクバクが止まりませんでした。

「自分の表現方法として「ハーレーに乗りたい」そう強く思いました。

それから月日がたち、20歳で大型自動二輪免許を手に入れ、22歳の時、自動車のメカニックをしながら頭金をつくり、やっと憧れのハーレーダビッドソンを手に入れることができました。

そして、憧れのハーレーライフを送ろうとしたのですが、その時に待ち受けていたこと・・・

それは、服装です。ハーレーに合う服装選びにとても困りました。

 

「なにを着たらいいんだ??」

 

ハーレーに似合う服・・雑誌をむさぼるように見ました。考えました。

結論は、やはり「アメリカンカジュアル」なのです。当たり前といえば当たり前なのですが、やはりアメカジ、もっと言うと「アメリカン ヴィンテージ」だったのです。

もう、20年前の話になりますが、それから今でも、ジーンズ、ライダース、ネルシャツ、スウェット、シルバーアクセサリー・・・どれも良質な製品を見ると興奮が止まりません。何というか、見ているだけで胸が苦しくなります!

そして、最後に行きついたのが「バイカーウォレット」です。

24歳の時です。服装は、ハーレーにに乗るたび毎回着替えて変りますが、お財布だけは何年も同じものを使うことに気づきました。また、生身の体でバイクに乗り、後ろポケットに挿すだけなので、ロープを付けたり、当時高速道路ではETCは無かったので、料金所ではお金を払うために、お財布を抜き差しする必要もありました。そして、日常生活でも同じお財布を使っているので、並みのお財布では傷みも早く、すぐに故障をしていました。それから、本革とお財布について考える日々が始まったのです。

2004年、このころから私のウォレット製作は始まりました。

 

folding-wallet
第1号の二つ折り財布

 

 

 

 

 

それから、お財布から始まり、スマホケース、ポーチ、バイクに装着するツールバッグなど、様々な革製品の製作を自分用に、そしてご依頼が増え始め周りの方にご提供してまいりました。

あれから、数十年ずっと常に「革」は身近にあったのです。

 

結果、いまでは日常生活に自然の温もりを感じる製品が欠かせない存在となりました。

 

そして、革という自然の産物を使い、丁寧な手しごとで作られた製品は、素朴な日々の暮らしを慈しむことができる

 

「大自然を感じる小さな製品」

 

と考えております。

 

 

 

大切なお話

 

革は地球の造り出す大切な産物。

それは、人工の素材より強くてしなやか。

また、なによりその豊かな表情が特徴です。

そのひとつに、革にはその動物が地球の大地生きてきた細かな傷やシワ、スジなどがあります。

これは、正真正銘の本革である証。

それと共に、革本来の特徴ともなっております。

ゆえ、このすべての製品が

「世界に一つのモノ」

になっていることを、是非手にとって実感してください。

 

 

自然と共存していく

 

自然の恵みである革素材。

私は、本革を扱う仕事として、自然とのかかわりを深く感じています。

なぜならば、当社の革素材は、全て自然のもので製造された牛のヌメ革を使用しているのです。

その革は、自然の植物「ミモザ」を代表とするさまざまな油分を使い加工している革。

 

あなたのお手元に届く製品になるときは、とても小さいですが、そこに至るまでに多くの自然の産物が使われているのです。

 

太陽と大地、森や川、植物と動物、その自然の豊かさを感じ、人と自然とが共存していく大切さを、わたしは革を通じて実感しています。

 

この思いを少しでも多くの方に知ってもらうため、2018年に「アウトドア部門」「教育ワークショップ部門」を設立いたしました。

 

これらの、コミュニティーを通じて、みなさまと「自然と革」に寄り添いながら革から学べる機会を提供する活動をしてまいります。

 

 

ものづくりに対する心

 

日本製の品質とは。

わたしは、それは革や材料、そして使う道具にまでも細かく追及していく製造方法から生み出されると考えます。

街中に「同じモノ」があふれる現代社会・・・。 生産工場では、「コスト削減」や「生産効率」を優先した大量生産のモノづくりが主流になっています。

職人のモノづくりとは何でしょうか??

そう。実際、価値のあるモノを作ることに焦点を置いた場合、実はこれらの事とは逆の工程を踏む必要があります。

それは、ひとつひとつの材料にこだわり、おしみなく時間をかけて製作する事を意味します。
繰り返しますが、「良いモノ」とは、手間をおしまず追及していくことから生み出されるのです。 これは、芸術の分野にも共通することでしょう。

当店では、そんな価値のあるモノづくりにコンセプトを置き、日本の良さを凝縮したアイテム作りに励んでいます。

 

 

最後に・・・

 

変わらぬ思い。

 

お客様より

「大切なひとへのプレゼントなんです」

というご相談を受けました。

 

「困ったなぁ。納期がギリギリだ。」と心の中で思いつつ、

お客様とその大切な人の喜んでいる姿が目に浮かび、ついつい引き受けてしまって、夜中に残ってひとりで製作するときがよくあります。

 

わたしは、一人でも多くの方に喜んでもらえ、究極のサービスをふるまい、美しい革製品に囲まれる豊かな生活を提供することが、 私の使命だと思っています。

 

これからも、この精神を変わらずお客様に「この商品を選んで良かった」「もらってうれしい」と心から実感していただけるよう、ひたむきに精進していく所存でございます。

 

最後までご覧いただき、まことにありがとうございました。

 

文:堀真琴